今や、働き方のスタイルや考えは変わりつつあります。都市と地方の距離や壁は徐々になくなり、副業が収入面だけではなく、各々の仕事や生活の価値観にも影響してきています。
岩手県でも、多くの人が起業し、地元を盛り上げるべく取り組みを始めています。さらに、都市部で働く地方出身者が、本業での経験を生まれ育った土地へ還元する手段や可能性を模索し始めています。RE:SiDE(リザイド)は、そんな両者をつなぐ、岩手特化型副業マッチングプラットフォームです。
RE:SiDEの特徴「ミートアップ」を開催
RE:SiDEの特徴のひとつに“ミートアップ”があります。“ミートアップ”とは、副業人材を求める事業者と副業を希望する登録者(以下、参加者)がオンラインで顔を合わせ、事業者の課題などをテーマにディスカッションを行う、数時間のお試し会議。事業者の要望に、参加者それぞれの考えやアイデアを持ち寄ることで、相互の理解と関わり方を探っていきます。
初めてのミートアップの参加事業者は宮古市で株式会社隆勝丸を経営している平子昌彦(たいこまさひこ)さんです。
- 参加事業者・代表者
- 株式会社隆勝丸 代表取締役
平子昌彦(たいこまさひこ)さん盛岡市旧都南村出身。高校卒業後、地元の会社に入社。会社員として働きながら、休日は妻の実家である宮古市にてホタテ養殖を手伝う。徐々に漁師の魅力にとりつかれ、6年間勤務した会社を退社。宮古市への移住を決め、漁師としての第一歩を歩む。2011年、東日本大震災にて義父を失ったことが契機となり独立を決意。2018年に株式会社隆勝丸を設立する。
平子さんは、「隆勝丸ホタテ」の美味しさを世に広め、愛する宮古市の魅力を多くの人に知ってもらおうと様々な活動を行っています。しかし、知名度を上げるための取り組みに課題感があり、スキル・経験がある人から意見やアイデアを得たいというニーズから、今回、岩手県に縁やゆかりのある、都市部にお勤めの4名に集まってもらい、ミートアップを行いました。
ミートアップ参加者
- Aさん
- 滝沢市出身。20代後半。現在は、某広告代理店のデジタルマーケティング部門にて、webサイト制作やECサイト運営のコンサルティングなどに携わる。宮古市へは小学生時代に遠足で行っただけでほぼ未開の地。
- Bさん
- 盛岡市出身。30代前半。現在は某食品メーカーにてPRを担当。大学卒業後に新聞社へ入社。記者として活動していた際には宮古市へもよく足を運び、今も同市をお気に入りの街と話す。
- Cさん
- 長野県出身。現在は某PR会社に勤務。大学卒業後、某報道機関の記者として勤務。岩手への転勤をきっかけに宮古市へも度々訪れ、同地の海産物の美味しさに感銘を受ける。
- Dさん
- 胆沢郡出身。40代前半。現在は雑誌、webメディア、広告、カタログなどを中心にフリーのディレクター、エディター、ライターとして活動。宮古市へ赴いた経験はなし。
当日の様子
まずは参加者の自己紹介を行い、平子さんから隆勝丸のビジョン、現在の事業、課題などを話してもらいました。
「宮古といえば鮭が比較的知られていますが、実はホタテの養殖も昔から行われています。ただ、まだまだ知名度が高いといえません。今も個人客への販売も行っていますが、30〜40代を中心にさらなる認知度アップを図りたいと思っています」
「それに、宮古という街は本当に素晴らしいところ。ゆくゆくは、自分たちのホタテにマリンレジャーなども絡めながら包括的に街のプロモーションも行えたらと考えています。そして、多くの人に宮古へ来てもらいたいですね」
確かに、三陸の海産物は全国的にもよく知られていますが、ホタテといわれると県出身者でもいまいちピンとこないかもしれません。
「ホタテはご飯やお味噌汁のように毎日食べるものではありませんからね。もっとも需要が伸びるのは、BBQが盛んに行われる夏。お中元シーズンとも重なりある程度注文はいただきますが、まだまだ岩手県内や宮古市内でもそこまで知られていないのが現状です」
ほかにも、SNSを通じて情報を発信し、海釣りのイベントも定期的に行っていますが、さらなる向上、成長を求めて有効的手段を模索中とのこと。
平子さんからの説明後はさっそく参加者からの質問へ。
「ECサイトで購入する世代と居住エリアを教えて下さい」
「宮古市の漁協内の様子についてはいかがですか?」
「これまでに行政となんらかの取り組みを行った経験はありますか?」
などの多くの質問があり、ある程度情報が共有されたところで参加者から意見やアイデアが語られました。
Aさんからはwebマーケティングを専門とする意見が。
「webマーケティングは、基本的にリーチできない消費者にネットを通じて届けられるのが利点。そのため、具体的にこんな人に買って欲しい、食べて欲しいと明確にすることが大事です。となれば、ターゲットに合わせて、使用するメディアは変わってきます」
「新しい顧客の獲得はもちろん大切ですが、既存の顧客をヘビーユーザーに育てていくことも並行して考えた方がいいかもしれません」
「トレンドや時期を意識し、情報の内容や発信の仕方に抑揚をつけるのもひとつの手」と話すのは、日頃からプロモーションの仕事をしているBさん。
「例えば、コアシーズンが春から夏であれば、GWやお盆と絡めながら話題になるような情報をそこへぶつけるとバズりやすいと思います」と、自身の経験を踏まえて説明。
さらには、「隆勝丸のサイトを見た時にすごくセンスがいいなと思いました。そこで、若さ、勢い、革新的、挑戦的、といったテーマで統一感をもたせ、カッコ良さや平子さん自身をもっと前面に発信をしていく方がいいと思います。“フィッシャーマンベンチャー”といったキャッチーなワードを用いると、若い人もイメージしやすいかもしれませんね」と話していました。
その意見にうなずくのは同じくプロモーションの分野で活躍されているCさん。
「平子さん自身はとても素敵な方だと思うのでもっと露出してもいいですよね。養殖ホタテをiPadで管理し、ドローンも駆使するなど、これまでにない漁師のロールモデルとしてセルフプロデュースを行っていくことは有益ではないでしょうか」
その意見に平子さん自身も納得のご様子。表情には充実感が漂います。
そして、意見として多かったのが、食との連動性です。
「見て、美味しそうと思って購入するのが自然の流れだと思うので、捌くところから調理まで一貫して動画で見せるのもやり方としてはありだと思います」(Aさん)
「料理動画を制作するのはありですよね。周囲の飲食店さんを巻き込んでメニューを考案するのもいい。ホタテは主食ではないかもしれませんが、だからこそ、レシピを100個打ち出すとインパクトはあると思います」(Dさん)
「BBQと絡めながらイメージ作りを進めるのもいいですね。アウトドアはトレンドですし、30代、40代の女性にも響くのかなと思います」(Cさん)
「BBQやキャンプみたいに、火を使って何かを焼くというのは需要があるシーン。あとはどうアプローチしていくか。卸先としてキャンプ場というルートがあってもいいでしょうね。美味しいと感じたタイミングで、すぐに購入できるという仕組みを作るのはリアルとデジタルの連動として効果的だと思います」(Aさん)
様々な話の中で、平子さんからも「ドローンを使い、水中映像を撮影したい」「遊覧船を使ってツアーを考えたい」といったジャストアイデアも。
最後に、平子さんに今回のミートアップの感想を聞きました。
「自分の想像を超えた意見が数多く飛び出して、とても有意義でした。専門的な意見を聞くことで、改めて盲点や新しい事実を知ることができました」
今回のミートアップを受け、この夏にはオンラインイベントを企画するとのこと。隆勝丸の今後の活躍がいっそう楽しみです。
参加者の感想
- ・ 参加してみての率直な感想を教えてください。
- Aさん:
地域の現状をより明確に把握することができました。自分の知見や経験で協力できる部分が多々あるのかもと感じました。そして、今後に向け、自分に求められるスキルセットの整理にもなりましたね。個人的には、ネクストステップまでの落とし込みができなかったのが少々悔やまれます。Bさん:
有意義な時間でしたが、自分たちの意見が現場と遠いものになっていないかが不安でした。おそらく、消費者や都市部に暮らしている側の理想論を語っているところがあり、実際は現場の温度感や人手不足など色々と手を動かすとなると大変だろうなと感じます。回数を重ねることで、具体的な解決策や協業など、より効果的なお話ができるかと感じました。
- ・ 地元に対する見方、考え方に変化はありましたか?
- Aさん:
当たり前のことが当たり前にできていない状況に対して、貢献できそうな機会は意外とあって、リモートでもいろいろとできることはあると改めて感じましたね。Dさん:
県民性から保守的な方が多いというイメージが、いい意味で覆りました。能動的にアイデアを具現化しながら行動に移している方が多い。それは、都心部のベンチャーとそう差はなく、非常に可能性を感じます。
- ・ 参加されるにあたり、事前に準備したこと、意識したこと、考えたことは?
- Bさん:
隆勝丸のホームページや各SNSのチェック、場所の周辺情報の確認。今回のゴールに向けた課題を抽出するための質問事項の洗い出しを行いました。Dさん:
各種SNSの内容確認と、宮古市の漁業、三陸の漁業の現状、過去との比較・検討。ホタテに関する養殖の方法、全国的に見た規模感のリサーチを行いました。
- ・ 今後、参加される方に向け、アドバイスがあれば教えてください。
- Aさん:
時間が限られているので、調べられる情報は事前に調べておかないと表面的な議論に終始してしまう可能性が高いです。また、評論家的なポジションで話してしまうことが多くなってしまうので、自分ならばどういったかたちで関われるかなど具体性を持って話していかなければ、単発での参加に終始してしまうように感じました。Cさん:
事前にできるだけ事業を把握したうえで、さまざまなアイデアを持って臨むと良いと思います。